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「これですか――?」
もう一度小学校の校庭まで辿り着いた時には、衣裳がくたくたになつたのと疲労し切つたのとで、行列をつくつて歩いている間に自然と現れていた共通の類似、あの正面を切つたまじめさが消え失せ、代りに日頃のそれぞれな持前が、尖つた顎だの鹿爪らしい顔つきだのいふものが今や歴然と姿を現した。まだ解散にならぬ前から気早やに冠をかなぐり取つた者もいたし、衣裳をぬぎにかゝつた者さへあつた。
「わたしはね、こいつは割れさうだなと思つたもんでね」と、笏で自分のはいている木沓を指して、
日々は平凡に単調に過ぎて行つた。
今泉の読んだのは予定記事だつた。だが、早のみこみと、簡単な熱中家が造作もなくつくり上げる本当らしさ、それによつてなほ熱中するといふあの癖とによつて、彼はそれをすでにあつたことのやうに話しこんだ。若し、他にまだ話したくてたまらないことがなかつたら、この報告はもつとくはしく、もつと飛躍しただらう。
徳次は自分のことのやうに熱心に路順を考へた。
「それあ、あつさりしていゝですな。こつちでは山車が生憎あいにくこはれて、満足なのは一つしかないんでね。あんまり淋しいからと云ふんで、こんな思ひつきをやらかしたらしいですがね」
「大きいとも、こんなのを見たのは久し振りだ」
「もう帰つたんかね」
だが、やつぱり戻らないで、しきりとこつちを見ながら行く。
「あの訴訟はどうなつたのかね」
「おい、ビールは冷やしてあるかい」
「どうでした」